――背徳
というのは、僕の文芸の主要テーマの一つなのですが――
この「背徳」を――
男の側からみるのか、それとも女の側からみるのかで――
だいぶ、その中身や風味が変わってくるようなのです。
僕は男なので、女の視点は少ししかわかりませんが――
どうも、女性が感じる「背徳」というのは、男が思っている「背徳」とは別物らしいのです。
字義からいえば、「背徳」というのは、
――美徳に反する
とか、
――善徳を拒む
とかいった意味でしょう。
決して、
――悪徳
と同義ではないのですね。
「背徳」とは、いうなれば、
――悪徳をけしかけること
です。
「悪徳」と「悪徳をけしかけること」とは、イコールではありませんよね。
が――
この「悪徳をけしかけること」という意味での「背徳」は、所詮、男にとっての「背徳」です。
女性にとっての「背徳」というのは、決して、反したり、拒んだりするものではないように思うのです。
むしろ、合わせたり、受け入れたりするものでしょう。
つまり、女性にとっての「背徳」とは、
――悪徳になびくこと
です。
この「背徳」にまつわる男女の違いは――
慮外に甚大であるように、僕には思えます。