理想と現実――あるいは、憧憬の宿願と実際の到達――
両者のギャップは、今さら僕が指摘するまでもなく、多くの人たちによって議論されておりますが――
やはり、人間が平穏に暮らしていくのを妨げる因子であるように思えてなりません。
僕自身の話をしましょう。
僕は、少年であった頃から、およそ「憧憬の宿願」などを達成したことはなく――
むしろ「実際の到達」に失意してばかりでした。
だから――
「人間、大いに努力し、少しでも理想と現実とのギャップを埋めよう!」などという号令には――
どちらかといえば、冷淡なほうです。
(勝手にすれば~)
などと思ったりもします。
もし、本気で理想と現実とのギャップを埋めたいのなら、理想を現実に近づけるしかないのです。
その逆はダメ――理想はコントロールできますが、現実はコントロールできませんので――
「実際の到達」を「憧憬の成就」にシフトさせるのではなく――
「憧憬の宿願」を「実際の目標」にシフトさせる――
ところが、「理想のコントロール」というのは、全く面白くないのですよね。
同様に「実際の目標」も全然つまらない――
この面白味のなさや、つまらなさを克服してこそ――
人は、理想と現実とのギャップを埋められるのでしょう。
克服すべきはギャップそれ自体ではない、ということです。