マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

意識が無意識を引っ張る

 名曲は半日や30分で出来上がってしまうものである、というようなことが――
 歌謡曲の世界では、まことしやかにいわれております。

 実際、そのようですね。
 プロデューサーから、突然、

 ――さあ、この歌詞で曲を作ってね。明日のお昼まで――

 といわれ、徹夜して必死で作ったら大ヒットしたという話を――
 今日も、ききました。

 そういう逸話は特に珍しいものではありませんから――
 たしかに、その通りであったのでしょうが――
 その作曲家の頭の中で起こった現象は、もう少し複雑であったでしょう。

 プロデューサーから「明日のお昼までに作ってね」といわれる前に、すでに、

 ――だいたい、こんな曲でいこう。

 というイメージが漠然とあって、それが半日で結実しただけなのかもしれませんし――
 そういうイメージはなくても、

 ――次、オファーがきたら、それがどんなオファーであっても、こんな曲にしよう。

 と無意識に思っていたものが、意識野へと不意に浮き上がって来たのかもしれません。

 しばしば、

 ――創造は常に考えていなければ不可能である。

 などというのは――
 このような漠然とした思考や無意識の意図の重要性が暗示されたものでしょう。

 常に意識して考えているうちに、無意識でも同じことを考えるようになる――意識が無意識を引っ張る――
 ヒトの脳という臓器は、そのような性質をも備えているに違いないのです。