芸術家は、第一義には主題だと考えています。
「主題」というのは、芸術家が生涯にわたって追い求めうるテーマです。
自分は何のために芸を追求するのか。
これに対し、評価が第一義だと考える人もいます。
「評価」というのは、鑑賞者の評価です。
芸術を楽しもうとする人たちの支持です。
なるほど――
――人は認められて力を伸ばす。
という考え方はあります。
それによれば――
たしかに鑑賞者の評価は重要です。
が――
そのためには、鑑賞者に自分の存在を知ってもらわないといけません。
気づいてもらわないといけない――
そのときに――
鑑賞者の手がかりとなりうるのは、
――主題
です。
その芸術家が、どういう主題を追い求めているのか。
芸術家というものは――
まず、自分の主題に共感してくれる一部の鑑賞者によって――
その存在が気付かれるのです。
その「一部の鑑賞者」が、その他の大勢の鑑賞者を感化していくことで、芸術家の評価は高まっていきます。
まずは主題――
評価は、後からついてくるのを待つしかありません。
もっとも――
このことが芸術家の悲劇を無数に引き起こしてきたことは、人類の芸術史が肅然と教えるところです。
生前には全く評価をされず、不遇のうちに亡くなる人は、数多くいます。
この先も、後を断たないことでしょう。