自分の力だけで生きるよりも――
他人の力を借りて生きるほうが、ずっと困難で煩雑で、知恵や勇気のいることだと思っています。
自分の力を恃むより、他人の力に頼るほうが、不安だし、面倒だし、気味が悪い――
そもそも、他人の力というものの真価に、人は、なかなか気付きません。
自分の力の真価は――まあ、明瞭に意識されているかどうかはともかくとして――だいたいのところは、気付いていると思うのです。
当然、その限界についても、まあ、わかっているといってよいでしょう。
が――
他人の力の限界は、意外にわかりません。
他人の力の中身だって、よくはわかりませんよ。
例えば、当初は「力の中身」とは思えなかった性質が、実は真に価値のある力の要素であるかもしれない――
暇な時間を暇とも思わず、即座に創造的な時間に変えてしまう力を――
愚かな人間は、「いつも忙しそうに振る舞うヤツめ」で片付けるかもしれません。
自分の力だけで生きるということは、実は、どんなに愚かな人間にもできることなのです。
他人の力を借りられるということは、人間が愚かではなくなるということの兆しの一つといえましょう。