夕方、仙台の街を歩いていたら、急に土砂降りの雨に遭いまして――
ビルの軒先で雨宿りしていたのですよ。
軒先といっても、わりと広いスペースで――
僕から2メートルくらい離れたところには、見知らぬ男性が立っていました。
その男性は、ピシっとしたスーツに身を固め、雨宿りにしては不自然な姿勢――直立不動の姿勢――を保ち――
ビルの玄関を背に立っていました。
そうしているうちに――
僕らの目の前に黒塗りに高級車が到着――
いかにも偉そうなお年寄りが、中から降りて来ました。
すかさず、直立不動の男性が駆け寄って、
「突然の雨の中、大変でしたね~」
と愛想笑いを浮かべます。
「いや~、まったく――ヒドい目に遭ったよ」
と、偉そうなお年寄り――
「さあ、どうぞどうぞ――」
男性は、そのお年寄りをビルの中に誘いました。
そのあいだ、お年寄りは、ずっと僕の方を怪訝な目で見ていましたね。
――なんだ、この男は? 気がきかない、挨拶もしないで――
みたいな冷たい視線です。
いや――
ただ雨宿りしてただけなんですが――
お年寄りが姿を消した方を振り返ると――
ビルの案内板が目に入りました。
高級そうな料理店の名前が幾つか表示されていました。