医学生であった頃に――
臨床実習でお世話になった先生と、お昼ご飯を食べていて――
ふと、
――日本では何でもできる人が不当に見下げられている。
という話になったことがあります。
――何でもできる人だってスゴいじゃないか。
と――
「何でもできる人」というのは、例えば――
医者をやっていて、タレントなんかもやっていて、たまに本なんかを書いたりする――
そういう人が必要以上に貶められる傾向にある――
ということです。
この国では、長らく、
――この道、一筋
といった生き方が推奨され、称揚されてきました。
――診療歴40年
とか、
――芸能生活40年
とか、
――作家になって40年
とか――
たしかに、それらは――
どれも素晴らしい経歴なのだけれども――
それと同じくらい、
――医者&タレント&作家の3足ワラジで40年――
という経歴だって十分に素晴らしいと思うのですよ。
もちろん――
そういう人は、診療歴40年の医者よりは経験不足で、芸能生活40年のタレントよりは芸に深みがなく、作家になって40年の人よりも淡白な本しか書けないのかもしれませんが――
でも、同時に3つの仕事をこなしていることで、予想外の相乗効果をうんでいる可能性は高いわけですから――
もう少し柔軟に評価する姿勢が必要です。
そういう人材に、片っ端から、
――器用貧乏
のレッテルを貼っていくのは、発想が貧困といえましょう。
そういう人材を、もっと賞賛していいと思うのですよね。
落ち着いて考えてみたら、そんなに簡単なことではないですよ――2足のワラジも3足のワラジも4足のワラジも――(笑
そうした人材評価に求められるのは――
その人材を全人的に評価しようとする発想です。
全人的にとは、
――1人の人間として、丸ごと――
という意味です。
評価基準には有形無形のものを含みます。