知的好奇心が刺激され、知的な営みに没頭するということの最大の利点は、
――浮世の憂さを忘れられる。
ということでしょう。
生きることは、基本的には――
ツラく、苦しく、憂鬱なことです。
もちろん、
――いやいや、そんなことはない。
という向きもあろうかとは思いますが――
たぶん、そうした人たちは多数派ではなく――
少なくとも――
大人が自活して生きることは――あるいは、自分だけでなく、自分の周囲の人たちの面倒をみながら、生きることは――
相応に、ツラく、苦しく、憂鬱なことです。
そうした浮世の憂さを忘れるために――
人は知的な営みに没頭します。
書物に触れたり、工作に勤しんだり、広く事物を調べたり、深く物事を考えたり――
が――
そうした知的な営みに、何か特有の誇りらしきものは、持たないほうがいいでしょう。
例えば、
――書物に触れることと賭け事に興じることとに、本質的な差異はない。
ということです。
どちらも浮世の憂さを忘れるためにやっている――
そんな風に思います。