マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

問題を話し合いで解決する

 問題を話し合いで解決するには、相応の手間や時間が必要です。
 話し合いを省略し、実力行使で一気に問題の解決を図るほうが、かえって手間や時間を節約できることがあります。

 あるいは――
 その手間や時間を惜しんでしまって、かえって新たな問題を生み出すことになり――
 それが切羽詰まってしまって、結局、実力行使に訴えざるをえなくなる――
 ということも珍しくありません。

 かといって――
 話し合いを省略してばかりいるようでも、困ります。

 争いが絶えません。
 実力行使というのは、よほど巧くやったとしても、ほぼ確実に、何らかの争いの種を巻くことになるからです。

 問題を話し合いで解決するには、膨大な手間と長大な時間とが必要であり――
 しかも、往々にして、その試みは失敗をする――
 それが現実です。

 ですから――
 人は歳をとるにしたがって、問題を話し合いで解決することに、しだいに重きを置かなくなるようです。

 気になっているのは、最近のアメリカの政権運営です。

 昨年までのブッシュ政権は、明らかに実力行使に重きを置いた政権でした。
 他国の見解や識者の懐疑を振り切って、有無をいわせずイラクに戦争を仕掛けました。

 それに対し――
 今年からのオバマ政権は、明らかに話し合いに重きを置いた政権です――少なくとも今のところは――

 オバマ政権のキーワードとして「listen to」を挙げる人がいるくらいです。
「listen to」つまり「耳を傾ける」――社会のあらゆる人種・階層の人々の声に耳を傾ける、価値観の異なる他国にも耳を傾ける――北朝鮮やイランにさえも――

 話し合いに重きを置いているという点において――
 オバマ政権は若い政権です。

 が――
 そのことは、オマバ政権が、より膨大な手間と長大な時間とを要する政権であるということです。

 ひょっとすると――
 ブッシュ政権よりも多くの失敗を繰り返すかもしれない――
 あるいは、より少ない成果しか挙げられないかもしれない――

 それでも――
 日々の暮らしの忙しさに追われる僕らの日常の感覚でみたときに――
 オバマ政権とブッシュ政権とで、どちらがより豊かな人間味を感じるかと問われれば――
 答えは明白でしょう。

 失敗するかもしれない試みに膨大な手間と長大な時間とを費やすことは、政略的ないし戦略的には、あまり賢くないのかもしれませんが――
 政治的に優れていないとまではいえません。

 少なくとも志の高さや挟持の確かさが感じられます。

 そのことは、去年までのブッシュ政権の全世界的な不人気ぶりが雄弁に物語ってくれています。