マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

芸の非人為的な要素に

 唄というものは――
 たとえ、どんなに巧く歌われても――
 歌う声が平凡では、いけません。

 たとえ、どんなに歌詞が非凡であっても――
 たとえ、どんなに旋律が非凡であっても――
 たとえ、どんなに歌唱が非凡であっても――
 歌声が平凡ならば――
 それらの良さは、ささっと掻き消されてしまうようなところがあります。

 その理由は、おそらくは――
 歌詞も旋律も歌唱も、人の手の入る余地が大きいのに対し――
 歌声は、その人が持って生まれたもの――人の手の入る余地が大きくないもの――だからでしょう。

 芸の多くはそうだろうと思いますが――
 人は、最後は、芸の非人為的な要素に惹かれていくのだと思います。