ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が閉幕しましたね。
日本代表が、前回大会に続き、優勝しました。
今回の代表チームを率いたのは、ジャイアンツの監督でもある原辰徳さんです。
現役時代は、「長嶋」や「王」のブランドを受け継ぎうるスター選手として、プロ野球界の期待を一身に背負った人でした。
その原さんがWBCの優勝監督になったことで――
思い出されることがあるのです。
たしか2002年のオフ・シーズンのことでした。
原さんが初めてジャイアンツの監督になって日本シリーズで優勝した年です。
当時、日米野球というのがありました。
アメリカのメージャーリーガたちを日本に招待し、オールスターチームを作ってもらって、日本のオールスターチームと親善試合を行う、という催しでした。
この年、原さんは日本シリーズの優勝監督として日本のオールスターチームの指揮を執っていました。
試合前の報道陣との対話の中で、ふと、
――いや~、スゴいチームだね。
と仰ったようなのですね。
すかさず、取り巻きの記者たちが、
――え? メージャー選抜ですか?
と問い返すと、
――違うよ。日本選抜のほうだよ。
即答だったそうです。
このコメントは、日米野球のTV中継の合間で紹介されたのですが――
まさに日本の野球ファンの心をつかんだ言葉であったと感じます。
日米野球で招待されていたメジャーリーガたちは、たしかにアメリカの野球界を代表する名選手ばかりでした。
マスコミは、しきりに「メジャーの○○という選手はスゴいです!」などと騒ぎ立てていました。
が、いくら能力や実績が素晴らしくても――
日本の多くの野球ファンにとっては――
遺憾ながら、まったくの無名選手に等しかったのですよ。
なぜならば――
今日のように、メジャーリーガたちのプレイを日頃から身近でみられたわけではなかったから――
日本の多くの野球ファンにとって、無名選手も同然の選手たちが、いくらオールスターチームを作ったって――
そこに大した魅力はありません。
それよりも――
能力や実績は劣るかもしれないのですが――
そのプレイを日頃から身近でみている日本の選手たちのほうが、よほどワクワク気分させてくれている――
そういう選手たちで作ったオールスターチームこそが、少なくとも日本の野球ファンにとっては、真の意味での「オールスター」なのだ、と――
そのことを、原さんは指摘されたのだと思います。
そういう感性を備えた方だからこそ――
WBCで連続優勝を遂げるチームに仕上げられたのだと思いますよ。
原さんは、会見の席などでは、終始、謙虚な発言に徹しておられましたが――
実は、大会期間中、ずっと、
――日本代表こそが世界最強のオールスターチームである。
と確信されていたはずです。