何事もそうだろうと思いますが――
起きて欲しくないことというのは、絶対に起きて欲しくないときに限って、起きるものですよね。
――できることなら起きて欲しくはないけど、今なら、まあ、いいよ。
というときには、あまり起きたりせず――
――今だけは、ちょっとカンベンしてほしい。
というときに限って、起きたりする――
いわゆる危機管理の話をしているのですが――
そんなに実際的な話をしたいのではありません。
どちらかというと、迷信の部類に属するような話をしたいのです。
よく野球などで、
――変わった人のところにボールは飛ぶ。
などといいます。
試合の途中で、それまで守備についていた選手の代わりに、他の選手が新たに守備につくと、そのイニングの最初のバッターの打球が、その人のところに飛んでいく、というものです。
実際にデータを集めて確率を算出したわけではありませんが、プロ野球の試合などをみる限り、たしかに、そういうことが、しばしば起こっているように感じます。
試合の途中で守備についた直後というのは――僕も野球の経験がないわけではないので、わかるのですが――あまり気持ちのよいものではありません。
少なくとも、試合の最初から守備についているよりは、なんとなく不安なものなのです。
その不安に付け込んで、確率の神様は、ちょっとイタズラをするようなのです。
不安を巧く制御できていないと――
たぶん打球の処理を誤ります。
困ったことです(笑
ところで――
当たり前のことですが、優れた選手は、試合の途中で守備についた直後であっても、打球の処理を誤りません。
が――これは僕の想像ですが――
そうであっても、まったく不安がないわけではないと思うのです。
一流のプロ野球選手であっても、試合の途中で守備につくときは、やはり多少なりとも不安を抱えているのではないかと思います。
にもかかわらず、打球の処理を誤らないのは、そんな不安を抱えているときこそ、
――よし! オレのところに来い!
と、逆に呼び込んでいるからではないでしょうか。
つまり――
起きて欲しくないことが起きてしまいそうなときにこそ、逆に、そのことが起こるように強く念じてみせる――
そうすることで、かえって不安を巧く制御できるのではないでしょうか。