精神的にも身体的にも苦しいときに、いかに周囲の人々への配慮を忘れないかということが――
その人の胆力を反映していると思います。
非常に苦しいときであっても、いつもと変わらない気遣いができる人は――
かなりの胆力の持ち主といえるでしょう。
たいていは、
――ま、いいか。
と、なおざりになってしまうものです――精神的にも身体的にも苦しいとき、というのは――
胆力というものは、体力とは違って、齢を重ねる度に増してくると思っております。
10代や20代の頃というのは、体力は余っておりますが、胆力に乏しいことが多いのですね。
僕自身のことを振り返っても、そうです。
10代や20代の頃は、本当に胆力がなかった(苦笑
だから――
当時の僕には、不思議でならなかったことがあるのです。
例えば――
百貨店やスーパーなどの大規模店舗が閉められるときに、従業員の人たちは――とくに年配の従業員の人たちは――最後の営業日まで、お客さんに腰を低くして対応していますよね。
明日から職がないはずなのに――
今の職場は、明日には、もうなくなっているのに――
なぜ、あそこまで丁寧に対応できるのか――
答えは、たぶん、
――胆力があるから――
です。
30代になって、ようやく、わかってきたことでした。