マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

主語を変えたら述語も

 公示日前なので、まだ、こういう話題も大丈夫ですよね。

     *

 自民党が、

 ――政権交代は日本の将来に禍根を残す。

 といった内容のキャンペーンを張っているようです。
 スローガンを厳密に抜粋すると、

 ――安易な政権交代は、この国の将来に大きなダメージを残すかもしれない。

 です。

 自民党は今の与党ですから――
 政権交代の意義を否定するのは当然です。

 そのことに文句はありません。

 文句があるのは、言葉の使い方です。

 いや――
「文句」というよりは「懸念」でしょうか。

 いらぬ老婆心を抱きました。

(おいおい――自民党、大丈夫か?)
 と――

 このスローガン――
 言葉通りに解釈すれば、

 ――政権交代は、仮にそれが安易に行われたものであったとしても、日本の将来にダメージは与えないかもしれない。

 というニュアンスになってしまいます。
 つまり、

 ――とにかく1度は政権交代させてみようよ。

 ということです。

 どうしたことでしょう。
 まるで民主党のスローガンではないですか(苦笑

 言葉の使い方がおかしいのです。
「安易な政権交代は、この国の将来に大きなダメージを残すかもしれない」ではなく、

 ――民主党への政権交代は、この国の将来に大きなダメージを残すかもしれない。

 とするか、

 ――安易な政権交代は、この国の将来に大きなダメージを残す。

 とすればよかったのです。

「~かもしれない」というのは、文末表現としては確度 50% くらいです。
 つまり、

 ――どっちに転んでも、おかしくはない。

 といったニュアンスですね。
 今の場合は、

 ――この国の将来に大きなダメージを残すかもしれないし、残さないかもしれない。どっちに転んでも、おかしくはない。

 といった主張になります。

 主語が「安易な政権交代」となっているのが致命的なのです。

 もし「民主党への政権交代」であれば、たしかに確度 50% で否定しておくべきでしょう。
 確度 100% で否定すると、誹謗中傷になりかねませんから――

 が、「安易な」は常に否定的な意味合いを含みますから――
「安易な政権交代」ならば、自民党にとっても民主党にとっても、確度 100% で否定しておかなければなりません。

 それを、確度 50% でしか否定していないのです。
 政権交代を真っ先に否定すべき自民党が、です。

 おかしな話ですよ。

 これでは、

 ――自民党民主党への政権交代を部分的には肯定している。

 とみなされても仕方がないでしょう。

 まあ、ムリからぬことかもしれませんね。
 今のご時世、輿論全体がそうなってしまっているですから――

 ちなみに――
 僕のいい加減な推理によりますと――(笑

 自民党が掲げているスローガン「安易な政権交代は、この国の将来に大きなダメージを残すかもしれない」は――
 当初は「民主党への政権交代」が主語になっていたのだけれども、

 ――特定の政党を名指しにするのは、いかがなものか。

 といった慎重論が起こり――
 結局、主語を変えることになったのです。

 もちろん――
 名指しを控えるのは全く構わないのですが――
 主語を変えるのなら、それに合わせて述語も変えないといけませんよね。