マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

言葉の着崩し

 子供の頃は、言葉を非論理的に使うことがカッコいいことだと思っていました。
 例えば、

 ――空が奏でる雨模様

 みたいな使い方です。

「空」と「雨模様」とは合っているけれども、「奏でる」は合っていない――
「奏でる」というのは、通常、楽器などを演奏することですから、「空が奏でる雨模様」は、

 ――「空」が楽器などを演奏することによって生じた「雨模様」

 という意味になります。

「雨模様」は、じきに雨が降りそうな空の様子を指していった言葉です。
 ちょっと音声を想起させるような言葉ではありません。

 よって、齟齬が際立ちます。

 が、この齟齬こそが、

 ――カッコいい

 と思っていたわけですね――子供の頃は――

 言葉を論理的に使いこなすのは、けっこう難儀な作業です。
 論理を駆使するための思考力はもちろんのこと、たしかな知識や経験が必要です。

 子供は、そういう思考力も知識も経験もありませんから――
 言葉を論理的に使いこなすのは、ほぼムリです。

 だから、言葉を非論理的に使いたがる――
 そういう使い方をカッコいいと思いたがる――

 ヤンチャな中学生が、制服を過激に着崩すのに似ているのでしょうね。