マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

威力に欠けた政治声明

 政府の行政刷新会議が、いわゆる事業仕分けを行っている件で――
 科学技術関連の予算を削減すべしとの結論になったことが、波紋をよんでいますね。

 有名大学の総長たちや業績の著しい科学者たちが、こぞって反発をしているようです。

 ――科学技術の国家予算を削れば、国家が危うい。

 と、記者会見で述べています。

 その主張自体は、1つの見識ですが――
 どうも説得力にかけるのですよね。

 威力に欠けた政治声明といいますか――

 たしかに、科学技術の国家予算を削れば、この国の国際競争力や指導力などは弱まります。
 諸外国からの畏敬の念も、今よりは薄れるでしょう。
 いわゆる先進国でも経済大国でもなくなって、ありふれた極東の弱小国になってしまうでしょう。

 その意味では、たしかに「国家は危うい」のです。

 ――これまでの国際的な地位が危うい。

 ということです。

 が――
 もし、国家の存続を第一に考えるのであれば、

 ――弱小国でも良いではないか。

 という主張は成り立ちえます。

 したがって、くだんの事業仕分けを統括している政治家たちが、そのような方針の下に、科学技術予算の減額を打ち出しているのであれば――
 それは、確固たる政治判断です。

 そのような政治家たちに対し、単に「国家が危うい」というだけでは――
 本質的な反論にはなりえません。

 ――なぜ先進国であり続けたいのか、なぜ経済大国であり続けたいのか。

 との理由を明示しなければ、

 ――弱小国でもやむなし!

 との政治判断に対する有効な反論にはなりえないのです。

 もし、老練の学者たちが、記者会見の席で、

 ――あの戦中・戦後の惨めな思いは2度と繰り返したくない。

 とか、

 ――外国に隷従する屈辱を子孫たちには味わわせたくない。

 といった心情を率直にこぼしていたら――
 科学技術予算は減額すべきでないとする反論が、十分に威力のある政治声明になっていたでしょう。