赦(ゆる)すということは、
――やって欲しくないことを、痩せ我慢をしながら、苦しみ、悩んで許す。
ということではなく、
――やって欲しくないことを「やって欲しくない」とは思わないようにする。
ということでしょう。
あるいは、
――自分自身のこだわりを捨てる。
とでもいいましょうか。
例えば――
妻に離婚を迫られている男がいるとします。
その男は妻と別れたくはない――
そのときに――
「赦す」とは、どういうことかというと――
「別れたくない」という気持ちを抱えたままで、離婚届に判を押すのではなく――
「別れたくない」という気持ちをどこかに置いてきて、離婚届に判を押すということです。
つまり、「赦す」とは、自分の気持ちを劇的に変える、ということです。
自分の心を巧く操るということですね。
言い換えれば、
――赦せない!
というのは、
――自分の心を変えられない!
――自分の心を巧く操れない!
というに等しいのです。
赦しの対象は、他者の言動ではなく、自分の精神です。