人の迷いや悩みは――
思い込みから始まると思っています。
自分の思い込みを思い込みと弁え、それを少しでも客体化し、ついには、さっぱりと忘れてしまわない限りは――
自分の思い込みに、結局は自分自身が振り回され続けるでしょう。
では、どうすれば自分の思い込みを客体化し、忘れることができるのかといえば――
基本は、
――理屈
だと思います。
理屈に頼る、あるいは、理屈にすがる――
ということですね。
思い込みに支配された自分に、理屈の力を駆使して迫り、やがて自分を説き伏せていくしかない――
もちろん、最初は、自分が思い込みに支配されているとは夢にも思っていませんから――
「思い込みに支配された自分」を説き伏せるのではなく、「思い込みに支配されているかもしれない自分」を説き伏せるのです。
これは、けっこうしんどい――
この際に必要になってくるものが、
――疑心
でしょう。
自分自身を疑い続ける心です。
――自分は思い込みに支配されているかもしれない。
と、つねに自問をする警戒心です。
それは、忍耐心といってもいいかもしれません。
自分自身を疑い続けることは、一般的には、かなりの苦痛ですから――
けれども――
自分の思い込みに振り回され続ける苦痛に比べたら、少しは楽だろうと思います。
自分自身を疑い続ける苦痛は能動的ですが――
自分の思い込みに振り回され続ける苦痛は受動的です。