マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

理想の読書は読み聴かせ

 本を読んで思い浮かべることというのは――
 おそらくは、その本を読む前に自分が体験したことや、感じたこと、考えたことです。

 つまり――
 本を読むことで、人は、自分の心の堆積物を掘り起こしているということです。
 掘り起こして、心の全体で撹拌している――

 ところが――
 自分の心の堆積物を、自分の心の全体で撹拌しようとするときに――
 一生懸命に本を読もうと自分の心が頑張ってしまうと、撹拌の場に当てるべき心の余地が狭くなってしまいます。 
 ただボーとしながら本を読むということなど、できませんから――

 これは、やむを得ないことです。
 読書に、ある程度の頑張りが必要なことは、異論のないところです。

 この原理的な限界は、読書が心に与える効能を阻害しかねません。
 心の堆積物が、心の全体で広く撹拌されないということは、致命的でしょう。

 撹拌が不十分な読書は、たぶん感動も不十分でしょうから――

 つまり――
 理想の読書は、

 ――ただボーとしながら本を読む。

 ということなのです。

 心の堆積物が十分に撹拌されうる余地を残した心で読むということです。

 そのような読書が――
 はたして可能でしょうか。

 可能です。

 読み聴かせです。

 例えば、母親が子供に語って聴かせる――あの読み聴かせです。