ある高名な作家によれば――
小説でも随筆でも、読者は、自分の知らないことが7割も書かれていたら、読む気をなくす――
のだそうです。
逆に、自分の知らないことが3割くらいだと、がぜん読む気が出る――
2割や1割では、読む気がしない――
そういうものだ、と――
したがって――
作家は、誰もが知らないことを探すこと以上に、誰もが知っていることを探すことに熱心でないと、成功はしない――
ということになります。
誰もが知っていることを探すのは、難しいですよ。
そんなものをみつけても――
嬉しくはないですからね。
少なくとも知的好奇心が満たされるようなことは、まず、ありません。
とくに、みつけたくもないのに、それをみつけようと躍起になる――
因果な商売ですね。
が――
それゆえに、作家は文章を書きたくなるのでしょう。
心が満たされれば――
文章を書く力はわいてきません。
心が満たされないから――
文章を書こうとする――
誰もが知っているようなことを探し続けることで――
自分の心をわざと飢(かつ)えさせることが、執筆の原動力になるのでしょう。
――つまんねえ~!
の向こうに名著はあるのです。