2月8日の『道草日記』で、
――なぜ人は旅に出るのか。
と疑問を投げかけましたが――
きょうになって1つ、その答えのヒントらしきものに思い当たりました。
それは、
――少なくとも10代の若者は旅に出るほうがよい。
というものです。
いわば、旅の効能ですね。
旅に出ることで、視野を広げることができる――
自分が生まれ育った場所では、決して見ることも知ることも感じることもできないものがある――
そのことを学ぶために、旅に出る必要がある――少なくとも10代の若者には――
そのような主張なら――
まあ、妥当でしょう。
が――
旅の効能を十分に理解した者が、改めて旅に出る価値はどれほどか――
となれば、それは別問題です。
旅に出続けることで視野を広げ続けられるほどに、現実は甘くありません。
旅に出ることに慣れてしまい、
――どこに行ったって、だいたいは、こんなものさ。
などと思うようになってしまったら――
旅は、かえって視野を狭めうるでしょう。
視野を広げ続けられるかどうか、あるいは視野を狭めないで済むかどうかは――
結局は、個人の資質の問題――性質の問題――に帰着されえます。
そこに旅の効能が関わりうる部分というのは、さほど大きくはありません。
つまり、「視野を広げるために旅に出る」という発想が通用する状況は――
極めて限定的であろうということです。
したがって――
「人は旅に出るべきか」と問うならば、それは愚問でありましょう。
――出たい者が出ればよい。
で済ませてよい話です。
「なぜ人は旅に出るのか」と問うならば――
旅の効能を前提にしてはならないと感じます。