――なぜ人は旅に出るのか。
の続きです。
きのうの『道草日記』で、
――旅に出る意義を旅の効能と絡める議論は説得力がない。
と述べました。
旅の意義とは、簡単にいってしまえば「視野が広がる」ということですね。
たしかに、そうした一面はあるのでしょうが――
旅に出れば絶対に視野が広がるというわけではなく、また、旅に出なくても視野を広げることはできると考えられるので――
「人は、視野を広げるために、旅に出る」という主張は、旅の本質をつかんでいるとは言い難いでしょう。
では、旅の本質とは何か、といえば――
それは、
――日常からの離脱
に尽きると感じます。
言い方を悪くすれば、
――現実逃避
ですね。
日々の現実から逃れるために、人は旅に出る――
つまり――
旅を求めて旅に出るのではなく、現実逃避を求めて旅に出るということです。
したがって――
旅以外の手段で現実逃避を果たしている人は、とくに旅に出ようとは思わないはずです。
その一例が僕自身でして――
僕は、小説を書くことで現実逃避を果たしていますから、とくに旅行に出かけようとは思わないのですね。
旅行に出かける時間があるならば、小説を書いていたいと感じます。
人にとって大事なのは旅ではなく、現実逃避でしょう。
日々の現実の重みに耐えきれなくなって、ふと旅に出る――
その重みを、他の手段で軽減したり無視したりできるようならば、必ずしも旅に出る必要はない――
そういうことなのだろうと思います。