きのうの大津波警報では、岩手・宮城の多くの世帯に避難勧告が出されていましたが――
実際に避難した人の数は少なく――
しかも、避難した人の多くが、警報が解除になる前に、避難所から帰宅してしまったそうです。
理由として考えられるのは――
津波の恐怖が風化していたこと――
避難所の居心地がよくなかったこと――
警報がなかなか解除されなかったこと――
などが挙げられるようです。
中には――
自己判断で帰ろうとして制止され、
――溺れ死んでもいいから、オラは帰る。
と捨て台詞を残したお年寄りもあった、とか――
たしかに――
来るか来ないか、わからないような大津波を待ちながら、寒い避難所でギュウギュウ詰めになっているのは――
少なくとも体の自由がきかないお年寄りには――
かなり堪えたでしょう。
「溺れ死んでもいいから、オラは帰る」というのは、半ば冗談ではあるにせよ、その気持ちはわかります。
もし、仮に大津波がやってきて、避難所にいて難を逃れたとしても――
家財道具の類いは全てメチャメチャにされているわけです。
――苦痛に耐えて避難所で待ち、大津波がやってきて、家も土地も家具も全部ダメにされ、それでもなお生き残ったとして、はたして何か意味はあるだろうか。
ということですから――
1960年のチリ地震津波では、100人以上の人々が亡くなったそうです。
あれから50年――
津波警報システムや防潮堤、水門などが調えられ、大津波からの防護体制は格段に強化されましたが――
大津波は、お年寄りに「溺れ死んでもいいから、オラは帰る」といわしめるくらいに残酷なままなのですね。