――未曽有の大惨事は筆舌に尽くし難い被害をもたらした。
などというと――
何か酷く重大なことをいったように感じられますが――
実際には――
何もいっていないに等しいのですよね。
人類史に刻まれる凄惨な内容かもしれないし――
全然そうではない――
もっと日常のほのぼのとした内容かもしれない――
……
……
「未曽有の」というのは、
――未だかつて一度もなかった
という意味です。
「筆舌に尽くし難い」というのは、
――言葉では十分に表せないくらいに
という意味です。
つまり、「未曽有の大惨事は筆舌に尽くし難い被害をもたらした」といわれても――
どんな種類の惨事が起こったのか、あるいは、どの程度の被害がもたらされたのか――
いわれたほうは、まったくわからないのです。
ですから――
たしかに、
――原子力発電所の原子炉・格納容器が爆発して、近隣の大都市圏を含む3000万以上の住民が避難生活を余儀なくされた。
といった内容かもしれないし――
もしかしたら、
――家中に散らばっていた猫の抜け毛を1本ずつ集めて1か所に置いていたら、当の猫がやってきて、それを撒き散らした。
といった内容かもしれないのです。
“家中に散らばっていた猫の抜け毛を1本ずつ集める”というのも、たぶん未曽有のことですし――
それを当のネコに撒き散らされたときのショックは、たぶん筆舌に尽くし難いでしょうから――