空腹のときの粗食は美味(おい)しく――
満腹のときの美食は不味(まず)く感じられるもの――
ですから――
思い切っておカネを節約したり、健康に配慮したりするならば――
空腹が気にならないうちは一切ものを食べようとせずに――
しだいに空腹が極まってくる頃になってようやく、そっと粗食に手を出す――
そんな食生活が望ましいわけですが――
さすがに――
これでは味気ない――
よほど禁欲的な人でもない限りは――
そんな実践はできないでしょう。
人は煩悩の塊――
空腹のときはもちろん、空腹がそんなに気にならないうちでも――
あるいは、どんなに満腹のときであったとしてさえ、つい美食に手を出してしまう――
そんな食生活が、人としては、むしろ自然なのです。
が――
それでは――
どんなにおカネがあっても、すぐにスッカラカンになってしまいますね。
あるいは――
どんなに健康であっても、すぐに病魔(生活習慣病など)に蝕まれてしまう――
……
……
なので――
多くの人は、
1) 空腹のときに美食
か、
2) 満腹のときに粗食
かで、どうにかバランスをとろうとするわけですが――
さて――
……
……
以下は――
人から聞いた話です。
皆さんは――
上記 1) 2) でいったら――
どちらを選ばれますか。
……
……
たいていの人は、1) を選ばれると思うのですが――
なかには、2) を選ぶ人もいて――
まあ――
かなりヘソ曲りな人ではないかと思いますが――
曰く、
――美食だろうが粗食だろうが、とにかく食全般への興味を薄れさせ、食以外の何か別のことに集中するには有効である。
のだそうです。
……
……
たしかに、そうでしょうね。
満腹のときに粗食をとっていたら――
たぶん、食の全てがイヤになるでしょうから――
……
……
ところで――
そんな“ヘソ曲がりな人”の職業は――
何だと思われます?
……
……
なんと――
食の批評家なのですね。
食の批評をきちんとフェアに行おうと思ったら――
食以外の何か別のこと――食の批評それ自体――に集中する必要があるのだそうです。
いわれてみれば――
たしかに――
食と食の批評とは別ものに違いありません。