カネの恐ろしさは――
本来は全く異なるはずの価値を、金額という同一の尺度で計るところにあります。
比べてはいけないもの同士までも比べることを可能にする恐さです。
例えば、ミカンのおいしさと馬の駆ける速さとは、本来、比べるものではないですよね。
が、ずっと消費者に支持され続けているミカンの金額と――
ずっと競馬のレースで勝ち続けている馬の金額とを比べてみれば――
ミカンのおいしさと馬の駆ける速さとが、何となく比べられてしまう――
もちろん、あくまでも、
――何となく
なのですが――
おカネの恐ろしさというのは――
たぶん、この「何となく」にあるのだと思います。
金額という尺度は、ヒトの脳が、自身の作動を容易にするために編み出した仮想の一つでしょう。
自身の作動を容易にするための補助具ですから――
何となく、その尺度に惹かれていってしまうのは、理の当然なのでしょうが――
――恐い
というのは――
おそらくは、そこなのです。