マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

「スゴく深いウソ」ではなかったけれど

 松井五郎さん作詞の『また君に恋してる』がヒットしていますね。
 かなり息の長いヒットだそうです。

 もともとはビリー・バンバンの唄として世に出されました。
 その後、坂本冬美さんも歌われて、静かなブームになっていったといいます。

 お酒のCMで流されていましたよね。

 最初はビリー・バンバンの皆さんの歌声で――
 最近は坂本冬美さんの歌声で――

 僕はTVをあまりみないのですが――
 どちらのCMも、強く印象に残っています。

 静かなブームになるのも、うなずけます。

 この唄で一番に盛り上がるところはどこかといわれれば――
 多く人は、CMで使われていた箇所を答えるでしょう。

 ――また君に恋している、いままでよりも深く――

 のところですね。

 CMで聴いたときに――
 僕は、「また」を「まだ」だと思っていました。

 つまり、

 ――まだ君に恋してる

 と聴き取っていたのですね。

 これを、僕は、
(スゴく深いウソだな)
 と思ったのです。

 前後の歌詞や曲調などから、若いカップルではなく、歳を重ねた夫婦のことを歌ったものだと思っていました。
 ですから、「まだ君に恋してる」というのは、

 ――出会って何十年にもなるけれども、その間ずっと恋し続けてきた。今もしているんだよ。

 という意味だと解釈したのです。

 そんなことはありえません(笑

 人の恋は4年で終わるといいます。
 そのあとに始まるのは愛でしょう。

 ですから――
「まだ君を愛してる」なら、たぶんウソではないけれど――
「まだ君に恋してる」なら、それは明らかにウソです(笑

 でも――
 その明らかなウソを敢えて突き通す男もいると思うのですよ。

 それを男の優しさだと感じる女もいるでしょう。

 そういう男女の唄だと、僕は解釈していたのです。

 だから、
(スゴく深いウソだな)
 と――

 まあ――
 実際には「まだ君に恋してる」ではなく、「また君に恋してる」であるわけで――
 だから、僕の考えたことは全くナンセンスであったわけですが――(笑

 この唄のいいところも、たぶん、そこなのでしょう。
「そこ」というのは、

 ――ウソのなさそうなところ

 です。

 同じ人に二度以上、恋をすることは――
 同じ人に何十年も恋をし続けることよりは、ありそうな話です。
 少なくとも、ウソとすぐに見破られるようなウソではない――

 それが、この唄の世代を越えて支持された一因でしょう。

「まだ君に恋してる」では、これほどの共感は集まらなかったのではないでしょうか。