片思いをできる喜びというのが――
あると思っています。
人を一方的に好きになれる幸福感です。
片思いというのは、一般には、つらく苦しいことだと思われていますが――
実際、つらく苦しい側面ばかりが目立ちますが――
でも――
そんな思いをし、それでも、なお、
――あの人が好きだ。
と思い続けられる状態というのは――
人として最高に満ち足りている状態だと感じます。
もちろん――
単に「あの人が好きだ」と思うだけでは、ダメですよ。
それは、自己が肥大化しているだけですから――
そうではなくて、
――あの人が自分のことを受け入れてくれなくても、それでも、あの人が好きだ。
と思えること――
そう思えて初めて、人は幸せになれるのです。
その幸せの本態は、一言でいえば、
――惑いがない。
ということです。
人は、生きていれば、惑うことばかり――
そうした惑いから解放されるときに、人は至福に手をかける――
ある種、宗教的といってもいいような次元での幸福感――
いや――
それは、
――解放感
と呼ぶべきなのかもしれません。