自然科学と数学とが混同されることは、珍しくありません。
たしかに、学校時代に、
――理数科目
などとして一括りにされていたことが忘れられなければ――
混同してしまうのはやむをえません。
ちなみに――
いわゆる「理科」というのは、おおむね自然科学のことです。
自然科学と数学とは、かなり違います。
自然科学は、実験や観察でわかる事実を論理で組み立てていく学問です。
一方、数学は、人が決めた定義や公理を論理で組み立てていく学問です。
定義や公理というのは、平たくいえば、
――ルール
のことです。
サッカーや野球のルールと同じようなものです。
ルールは人が作ります。
ですから――
数学は、基本的には、人が作ったものに基づいているといってよいでしょう。
自然科学は違うのです。
自然科学は、実験や観察でわかる事実に基づいています。
これらは、人が作ったものではない――
人が誕生する前から、自然界にあったものです。
ですから――
自然科学と数学とは、かなり違うのです。
思い切った比喩を出しましょう。
自然科学が数学と異なるのは――
水上都市が空中都市と異なるのに似ています。
水面の浮遊構造物の上に築かれるのが水上都市です。
空中の浮遊構造物の上に築かれるのが空中都市です。
どちらも、ある程度は現実から遊離していますが――
その遊離の仕方は段違いです。