自分の気持ちが動きつつある時というのは――
自分でも何となくはわかりますよね。
例えば――
ある決断に向かって自分の決意が固まりつつあるような時というのは、何となくわかる――
その時の感覚の強さというは、直感的には、その動きの速さに比例しているように思えるのですが――
実際には、そうではなく――
気持ちの動きの速さの時間微分――加速度に相当する変量――に比例しているような気がします。
つまり、気持ちが速く動いている時というのは――
そんなに強い実感を伴わない――
――今、自分は、こういうことを決断している。まさに、今、している。
というときの感覚は、それほどには強くない――
むしろ――
なかなか動こうとしなかった気持ちが、徐々に動き始めたときにこそ、強烈な実感を伴っている――
――あ、自分は、そろそろ、こういうことを決断しようとするのだな。
というときの感覚のほうが強い――
だからでしょうか。
人の世は、そんなふうにできていますよね。
およそ人の世の事物は――
いったん動き始めてしまえば、あっという間に落ち着くものです――しかるべきところへ、あっという間に――
動き始めるまでが大変なのです。
動き始めた直後が大変なのです。