小説家は、なろうとしてなれるものではなく――
気付いたらなっていた、というものでしょう。
よく小説家の経歴として、小説家になるまでに様々な職を転々としていた、という話をききます。
一見、
――将来、小説家になることを見越して、色々な業種を経験しておいた。
と思われがちですが――
職を転々とするという経験は、かなりつらいものです。
そんなに簡単に選べる道ではない――
将来、確実に小説家になれるのなら、話は別ですが――
そんな保証はどこにもないのです。
いや――
仮にそんな保証があったとしても、職を転々とするのは、なかなかにストレスのたまる生活です。
1度や2度の転職なら新鮮な気持ちになれるかもしれませんが――
4度も5度もとなれば、暗澹たる気持ちになるといいます。
人が職を転々とするときは、やむを得ず、そうしているのです。
どの職に就いても、うまくいかない――
苦しい――
もどかしい――
そんな気持ちを原稿にぶつけて――
小説を書いてみた――
書いたものが、たまたま出版社の目にとまった――
高く評価された――
それで、小説家になった――なってしまった――
そういうことなのだろうと思います。