子供の頃に、
――小説は人間を描くものだ。
と教わりましたが――
きょう、ふと、
(人間を描かない小説なんて、あるんだろうか)
と考え込んでしまいました。
小説に限りません。
物語全般について、人間を描かないということがありうるだろうか、と――
人類が滅亡し、数万年ないし数十万年後の世界の物語――
というものを、みたことがあります。
が――
そこに登場していたのは、人間であって人間でないもの――例えば、擬人化された動物であったり、人間に似た知的生命体であったり――でした。
(結局は人間じゃん)
と思った記憶があります。
そのときの僕は――
今にして思えば――
「人類が滅亡し……」という文句に触発されて、
――人間が登場しない物語
というものが確かに成立しているところを、本気で期待していたのでしょうね。
そのような物語を、僕自身は紡ぐ気にはなれません。
僕は「人間が登場しない物語」というものは、決して成立しえないと、考えています。
が――
そのような物語が、物語として、本当に成立しているのなら――
ぜひ、みてみたいと思います。
そして――
その物語が、物語として、どんなふうに成り立っているのかを見極めたい――
そこには、物語の新たな可能性が眠っているでしょう。