救いのない物語で救われる――
ということが、あると思っています。
理不尽な展開、悲惨な結末――
そういった物語が、かえって人の心を安らかにする――
もちろん――
それで安らぐ人は、物語の虚構性を十分にわかっているのです。
――しょせん、これはウソの話だ。
と割り切れるから、救いのない物語にも救われる――
――ホントは、ここまでヒドくはないものだ。
と思い直せるので――
逆に、救いのある物語は、かえって人を苦しめるかもしれません。
――ホントは、こんなに巧くはいかないものだ。
と思わされるので――
物語というものは、たぶん――
大団円に向かってばかりでは真価を発揮できないものです。