3月11日に被災した人は――
皆、それぞれに固有の被災をしているのです。
建物が倒壊して下敷きになった人――
建物が強く揺れて轢死しかけた人――
建物が強く揺れずに平気だった人――
津波にのまれて溺れかけた人――
津波に追われて逃げ切った人――
津波が足下に迫って脅えた人――
津波を全くみないで済んだ人――
夫や妻を失った人――
親を失った人――
子を失った人――
家を失った人――
職を失った人――
その差異は、一つひとつ挙げていったらキリがない――
その由来は、驚くほど単純にして些細な偶然です。
けれども――
この差異が大事なのです。
これを無視し、十把一からげに扱ったら――
被災の実態は語れない――
単純で些細な偶然が、現実の被災を実際以上に残酷なものにしています。
そのことに僕が気付いたのは、被災して1週間以上あとでした。
そして――
そのことを強く感じるようになったのは、被災して1ヶ月以上あと――
ほんの数日前からです。