人が知性を最も厳しく試されるのは、
――よくわからないことを、よくわからないままに扱わざるえないとき
であろうと思います。
よくわかっていることを、よくわかった上で扱うときには――
特段の知性は求められません。
十分な鍛練を積めば、誰でも無理なく扱えるようになります。
では――
よくわからないことを、よくわからないままに扱うためには、どうすれば良いのでしょうか。
簡単にいうと――
「よくわからないこと」を「よくわかっていること」のほうに引き寄せれば良いのです。
その引き寄せの方向を決めるのに必要なのが、知の感性です。
いわば、その「よくわからないこと」を、どの「よくわかっていること」のほうに引き寄せれば良いのかを、正しく選びとれる感覚ですね。
そして――
その引き寄せを確実に行うのに必要なのが、知の理性です。
いわば、その「よくわからないこと」を、自分の選びとった「よくわかっていること」のほうに引き寄せるのに必要な論拠を着実に積み重ねていく思考です。
知の感性は、直感に基づく雑感です。
知の理性は、論理に基づく推理です。
その「雑感」が豊穣にして乱雑であるほどに、鋭利にして柔軟な「推理」が幾筋も生み出されます。