何ということのない会話を交わすことで――
心の和むことがあります。
その日、初めて出会った見知らぬ人と――この先、どこかで再会することは多分ないような見知らぬ人と――
ちょっとしたアクシデントの話をする――例えば、急に降り出してきた雨の話をする――
そういった会話を交わすことで、心の和むことがあります。
会話には、情報交換の役割があります。
場合によっては、共同で考察をする役割もあります。
が――
見知らぬ人との何ということのない会話では、情報交換も共同での考察もありません。
ただ言葉のやりとりをする――
互いの声色をきき、表情をみて、ちょっとした気配りを示しあう――
たったそれだけのことで、心は和むのです。
その和みは、
――自分は、この世界に一人でいるのではない。
という安堵感、あるいは、
――自分は、この世界に存在していてもいいのだ。
という安心感――
そういった感覚に由来するものでしょう。