――復旧と復興とは違う。
といいますね。
東日本大震災に関連した文脈で、しばしば指摘されることです。
最初は僕も、
(そうだ、そうだ! 復旧と復興は違う!)
と思っていたのですが――
このフレーズを何度もきかされるうちに、
(そんなには違わないはずだぞ……)
と思うようになってきました。
その思いをハッキリ自覚したのは、次の一節を耳にしたときです。
――阪神・淡路大震災では復旧で良かった。被害を受けた地域の多くは、すでに十分に振興していた。しかし、東日本大震災で被害を受けた地域の多くは違う。復旧ではなく、復興が必要だ。
なるほど――
この一節での「復旧」と「復興」とは明らかに違います。
復旧とは、地域の振興の具合を震災以前のレベルに戻すことであり――
復興とは、地域の振興の具合を震災以前より高いレベルへ導くことです。
が――
どうでしょうか。
そうした復興を、被災地の人たちの多くは望んでいるのでしょうか。
僕の印象では、答えは「ノー」です。
僕の理解によれば――
復旧とは、震災以前の社会活動を再開するのに必要な最低限度の社会機能を回復させることであり――
復興とは、震災以前の社会機能を完全に回復させた上で、次に同じような震災に見舞われても大丈夫なように、十分な対策をとることです。
例えば、津波で線路が流されたJRの在来線にとって――
復旧とは、線路の再敷設が終わり、どうにか列車の運行が再開されることであり――
復興とは、以前と同じようなダイヤで列車の運行がなされた上で、近い将来、同じような地震が起こったとしても、利用客に深刻な支障が出ないような防災・減災対策をとることです。
被災地の人たちの多くにとって――
復興とは、震災の衝撃を忘れ、震災への恐怖心から解放されることであり、津波に襲われた港町を神戸のような大都市に近づけることではありません。
そのような意味で、復旧と復興とは大して違わないのです。