――ハンドルを握ると人が変わる。
などといいますね。
つまり――
車を運転しているときと運転していないときとで人柄が全く違うかのような人がいる――
ということです。
たしかに、その通りと思います。
何より、僕自身、自分の人柄が変わっているように感じます。
ふだんは割とノンキで鈍感なほうだと思うのですが――
車を運転しているときは、かなり怒りっぽくなるのですね。
が――
変わっているのは、正確には、人柄ではなくて――
他者から求められる社会行動ないし社会規範です。
例えば――
運転中は、車道の秩序を乱さないような配慮が求められます。
極端な話――
たとえ50キロ制限の道であっても、見晴らしが十分によければ、70キロくらいで走らないと、後ろからクラクションを鳴らされる――
こうしたことは、車道を移動しているから起こるのであって――
歩道を移動しているのであれば、起こりようがありません――せいぜい「ちょっとスイマセン……」と申し訳なさそうに声をかけられる程度でしょう。
「スイマセン」と「クラクション」とでは、えらい違いですよね。
それらへの応答が全く違ってしまうのは、むしろ当然のことでしょう。
この違いが、あたかも人柄の違いであるかのように感じられるのだろうと思うのです。