人と人との争いは――
財が絡むと、途端に凄惨となります。
AとBとが、
――aがいい。
――いや、bがいい。
と言い争っているうちは――
建設的な討論で済んでいたものが――
もし、討論の決着に金銭的な利害が付与されたりすると――
例えば、「a」という主張が通ったときは「A」に相応の金銭がわたり、「b」という主張が通ったときは「B」に相応の金銭がわたる、というような状況を設定すると――
建設的な討論は、非建設的な口論へと堕するのです。
財の魔性とでもいいましょうか。
何とも理不尽な原理です。
財は人の心を狂わせます。
財が絡まなければ何でもないようなことで――
理性は傷つき、感性は汚されます。
いや――
それこそが、人の本性なのか……。
財は、人の心を原始の姿に変えているだけなのかもしれません。
「財」の概念を産んだのは――
おそらくは原始の社会です。
そうした社会の人々の心が、財によって、生々しく呼び覚まされるに違いありません。