マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

政治学者の仕事

 10代の頃――
 政治学者の仕事の意味がわかりませんでした。

 政治学者がTV番組に出演してコメントをしているのをみて、
(この人たちは何をしてるんだろう?)
 と首を傾げたものです。

 30代の半ばを過ぎた今では――
 少し事情がわかってきました。

 ――政治学者は、政治家の政治判断を検証し、考察し、判断しなおすことである。

 と考えるようになっています。

 少なくとも、それが有権者によって望まれる政治学者の仕事ではないか、と――

 政治家は、時々刻々と変化する社会情勢(国内社会や国際社会の状況)に対応しながら、その都度、政治判断を下していきます。
 その際には、十分な時間の与えられないことがほとんどです。

 ――時々刻々と変化する

 とは、そうした制約を意味しています。

 さらにいえば――
 政治家は自らの政治判断の結果責任を問われます。

 あとになって、

 ――あなたの決断は完全に誤りであった。

 と糾弾されて――
 場合によっては、政治家としての地位や役職を失うことになります。

 そうした時間の制約や責任の制約から自由になって、

 ――政治家は、あのとき、本来いかなる政治判断を下すべきであったのか。

 を考えるのが、政治学者の仕事だろうと思います。

 政治学者は、少なくとも政治家よりは、長い時間をかけて政治判断を下すことができます。
 その時間の中で、当の政治家には決して集められなかった情報を集めることもできるでしょう。

 また、政治学者は、少なくとも政治家よりは、自分の政治判断に軽い責任を負います。
 そうした気楽さから、当の政治家には難しかった自由な発想を練り上げることもできるでしょう。

 つまり――
 当の政治家には不完全な形でしか出せなかった答えを、政治学者は完全な形で出せるのです。

 もちろん、政治学者の下す政治判断に直接的な意味はありません。

 が――
 政治家が、近い将来に、あるいは遠い将来に、政治判断を下すときの参考にはなるでしょう。

 間接的な意味なら、十分にもつのです。

 喩えていうならば――
 政治学者の仕事は、過去の社会情勢を踏まえ、政治の例題を作成し、それに解答や解説を付すことです。

 当然ながら、その「解答」や「解説」は一つではありません。

 どんな「例題」を作るのか、それに、どんな「解答」や「解説」を調えるのか――
 そこに、それぞれの政治学者の力量や個性が問われます。