責任を果たすということは、依頼をこなすということと、かなり似てはいますが――
実際には、微妙に違います。
何が違うのか――
依頼をこなすときに、その「依頼」が、誰によって、どのような理由でされているのかの吟味があるかないかの違いです。
そうした吟味を経ず、ただ依頼を引き受けていたのでは、責任を果たしたことにはなりません。
その依頼は、本当は自分が引き受けるべきではないのかもしれない――
自分が引き受けることで、誰かに迷惑をかけてしまうかもしれない――
そうした視点を獲得しておくことで、自分の責任の内容を明確に認識することができます。
つまり――
責任を果たすためには、自分が引き受けるべき依頼とそうでない依頼とを的確に見分ける判断力や感性が必要なのです。
そのためには――
自分の能力や経験・知識の限界を十分に把握しておくだけでなく――
自分の所属する共同体(家庭、職場、地域社会、広域社会など)が、自分に対し、どのような役割を期待しているかに敏感になっておく必要があります。
自分には何ができ、何ができないのか――
自分の所属する共同体は、自分に何を期待し、何を期待していないのかを、冷徹に分析する意志や覚悟が欠かせないのです。