雪の中でバスを待っていたら――
すぐ目の前で、バスとタクシーとが接触事故を起こしました。
駅前の大通りでの出来事です。
事故の瞬間は目撃していないのですが――
どうやら、バックしていたバスが、客待ちをしていたタクシーにぶつかったようでした。
幸い大きな衝突ではなく――
遠目には車体の傷もわからないくらいなのですが――
バスの運転手さんは、すっかり気が動転してしまったようで――
道路の真ん中にバスを停めたまま、携帯電話で何やら報告を始めます。
タクシーの運転手さんは怒りが収まらず、横柄な態度でバスの運転手さんに突っかかっているようです。
どちらの運転手さんも男性で――
バスのほうは、30~40代、やや大柄、気弱そうなお顔つき――
タクシーのほうは、60~70代、小柄の細身で、気は強そう――
バスの運転手さんは、最初から低姿勢で、しきりに頭を下げていました。
一方、タクシーの運転手さんは、ズボンのポケットに手を突っ込んだまま、「おぅ!」と応じる感じ――
あまり気持ちのよい光景ではありませんでした。
そのうちに警察の人たちが駆けつけて、4人で話を始めたのですが――
バスの運転手さんには、あんなに横柄だったタクシーの運転手さんが、警察の人たちには、ひどく低姿勢――
いきなり深々とお辞儀をしてみせたり――
あのお辞儀しかみていない人は――
たぶん謙虚で誠実な人だと誤解をするでしょう。
それこそが、
――年の功である。
といえば、たしかに、そうかもしれませんが――
傍観者の僕には、今ひとつ釈然としない所作でした。
あのバスの運転手さんへの横柄な態度さえなければ――
すがすがしい一コマだったと思うのです。
まあ――
タクシーの運転手さんも、ぶつけられた直後は、気が動転していたのだろうとは思いますがね。
ぶつかってきた相手に横柄な態度をとりたくなる気持ちは、人としては自然です。