人が、未知の自然現象に向き合うときに――
その自然現象の機序を理解するための適当な仮説を設定し、その仮説を前提にして対応策を検討する――
というやり方があります。
このやり方は、未知の自然現象に向き合う人たちの気持ちを落ち着かせるという意味では、大変に役に立つのですが――
一つ重大な欠点があって――
それは――
もし、その仮説が的を外している場合には、人は、その未知の自然現象への対応を致命的に間違えてしまう――
という点です。
さらに厄介なことに――
このやり方では、自分たちの対応が致命的に間違っていることにも、なかなか気づけないのですね。
仮説を前提にしていますから、その仮説の妥当性までは、そう簡単には疑えない――
疑えるようなら、最初から前提にはしないものです。
つまり――
そう簡単には疑えないということは、そんなに不安を感じずに済むと、いうことでもあるのです。
あえて疑いにくい状況を作り出し、不安から解放されるために、わざわざ適当な仮説を前提とするわけですから――
この欠点は根本的に不可避であるといえましょう。
ですから――
わざわざ疑いにくい状況を作り出すことはせずに、不安から解放されることを求めずに、未知の自然現象に向き合おうという考え方もあるわけです。
このやり方で臨む場合には――
未知の自然現象に向き合うときの不安をまるごと受け入れる、ということになります。