文章で伝えておきたいことと、そうでないこととがあるのです。
できることなら、文章では伝えたくない――
口頭であれば、もしかしたら、伝えたいのかもしれない――
そういうことがあるのです。
文章にするということは、感受や思考の内容を記録するということです。
あるいは、文字という記号の羅列として平面に固定する――
この「平面に固定する」というのが、なんとも恐ろしい――
平面に固定されているのですから――
2次元的に一括で俯瞰できるわけですよ。
そうしたら――
あそこに○○が固定されていて、ここに××が固定されていて――
そういうのが、いっぺんで視野に入ってくる――
その煩わしさは――
音楽を楽譜でみせられる煩わしさに通じるでしょう。
楽譜というのは、音楽が音符という記号の羅列として平面に固定されているものです。
この煩わしさは、意外に普遍的であるようですよ。
というのは――
どんなに優れた音楽家でも、音楽を楽譜でみせられるのは、けっこう煩わしいことだそうですから――