夢は実現しないから光り輝くのです。
もし、実現したら、それは現実ですから――
現実だけがもつ複雑さや汚さ、淀み、凄み、深みなどを呈しているはずです。
それは、決して光り輝くものではない――
つまり――
夢を追いかけるということは――
そうした現実の有り様から目を背ける、ということになりかねません。
夢を追いかけるということは――
幻想の光の輝きに目を奪われる、ということでもあります。
夢を追いかけるのも結構なことなのですが――
現実から目を背け、幻想に入り浸るというのは、かなり危険です。
夢を追うことで人生を棒にふった人も、一人や二人ではありません。
そんな危険を冒してまで夢を実現し、何が得られるでしょう。
現実です。
夢を実現させたら、そこには現実しかない――
凄みや深みはあるけれども、複雑で汚くて淀んでいる――
そういう現実です。
夢を夢らしく仕立てるなら――
夢を追いかけないほうがよいのです。
追いかける振りはする――
が、決して追いかけつづけようとはしない――
追いかけようとして、あえて途中でやめてみせる――
現実という確かな大地を踏みしめて、ふと天空を見上げたときにみえる一番星こそが――
夢の本質であろうと、僕は思います。