虚構の物語を楽しむには――
それなりの気力や体力が必要なのだと感じます。
虚構の世界や人物を理解し、受け入れ、それらに慣れようとする意志の力――
その意志を持続させる集中力――
その集中力を引き出す体調――
逆にいうと――
気力や体力が充実していないときには――
虚構の物語を楽しむことは、おぼつかないのです。
書店の本棚で、面白そうな小説の背表紙が目に入ってきても、
――は~。
とため息をついて通り過ぎてしまう――
物語を楽しむのですら、そうなのですから――
物語を紡ぎだすのは、もっと大変です。
小説家は、気力や体力を極限にまで充実させることで、どうにかして最後まで物語を紡ぎだしているのです。
その、
――極限にまで充実させる。
という意志は――
いうなれば、
――執念
です。
小説家が物語を紡ぎだすとき――
その気力や体力を支えているのは、執念なのですね。
執念がなければ――
気力や体力は、どこか別のほうへいってしまうでしょう。
小説の読者が小説に飽きると、何か別のことに興味を移してしまうのと同じです。