大学生だった頃――
年配の先生たちに、
――知的好奇心が大事だよ。
と、よくいわれました。
その後――
大学院に進むと、年配の先生たちだけでなく、僕より少し年上の人たちにも、
――知的好奇心が大事だよ。
と、いわれました。
そのときは、
(そうか!)
と思ったものですが――
実は、その「知的好奇心」の中身については、よくわかっていませんでした。
今も、しっかりと言葉で定義せよといわれたら困るのですが――
簡単にいうと、
――衣食住や生老病死に関わらない好奇心
となりましょうか。
あるいは、
――無人島で、たった一人、身一つで暮らしていたとしても感じる好奇心
です。
このような「知的好奇心」が、なぜ大切なのか。
それは――
そのような好奇心を抱くことで、時代をこえて、地域をこえて、普遍的な価値を見出しうるからです。
いうまでもなく――
そのような価値観は学問や芸術の礎となっています。
衣食住や生老病死に関わらないがゆえに――
世代や国や民族の垣根をこえて、共有されうるのですね。
逆にいえば――
衣食住や生老病死は、自分の所属する世代や国や民族に大きく影響を受けています。
衣食住や生老病死への関心の持ち方は――
これから社会に出て行こうとする10代と、余命を指折り数え始めた80代とでは、まったく異なっています。
あるいは――
つねに政情が安定している先進国と、紛争の絶えない発展途上国とでも――
まったく異なっているのが普通です。