そのときはわからなくても――
あとになって、
(あ、そういうことか)
と、わかることがあります。
人は――
喧騒に囲まれているときには、どうしても近視眼的で狭隘な視野になってしまうものですが――
静寂に包まれているときには、様々なことが複合的かつ重層的に考えられるものです――
それも、案外、無意識のうちに――
喧騒に囲まれながら、あることとあることとを別々に耳にして――
そのときは互いに何の関連もないと思っていた事柄が――
ひとたび静寂に包まれて――
ふと、
(あれとあれとは、実は、密接につながっていたのか……)
と悟るとき――
人は、自分の迂闊さや浅慮のほどを痛感します。
静寂が、人を謙虚にさせるのでしょうか。
おそらく――
そう単純な話ではないでしょう。
静寂が――
頭を円滑に働かせるのです。
頭が円滑に働いた結果――
人は、喧騒の只中に置かれていたときの自分の周囲の状況を、そのときになって初めて、正確に把握するのです。
人が謙虚になるのは――
周囲の状況が正確に把握できているときです。