マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

いちばん最後に名人芸を

 名人芸は、忘れた頃に思い出されます。

 誰かの傑出した技術は――
 それを毎日みている人にとっては、とくに「傑出している」とは感じられないものですが――

 その技術を毎日はみなくなって、しばらくが経つ頃には、

 ――たしかに、あれは名人芸だった。

 と感じ入るものです。

 つまり――
 名人芸を「名人芸だ」と思い当たるまでには――
 凡人に手による凡百の技術を幾多も繰り返しみる必要があるのです。

 よって――
 いちばん最初に名人芸をみてしまうと、かなり損をした気分になります。

 ――もはや、あの名人芸を目にすることは二度とないのか。

 と失望し、落胆してしまう――

 できることなら――
 初めに凡百の技術を幾多も繰り返しみて、いちばん最後に名人芸をみたいものです。