ものを作るのに才能が必要ならば――
ものを壊すのにも才能が必要だろうと思います。
ものを作るには――
何を作れば喜ばれるかが、十分にわかっている必要があります。
それと同じように――
何を壊せば喜ばれるかも、十分にわかっている必要があるのです。
ものを作るのも、ものを壊すのも、社会には必要な営みです。
ただし――
そこには、明確な棲み分けがあります。
ものを作る人は、ふつうは、ものを壊しません。
作られたものが壊される悲哀を知っているからです。
一方――
ものを壊す人は、ふつうは、ものを作りません。
壊すより作るほうが手間や時間のかかることを知っているからです。
ものを壊して、それから、ものを作って――などということを平気でやってのけるような人は――
この社会に、ごくひと握りです。
ところで――
壊すより作るほうが手間や時間がかかるということは――
壊す人は、どうしようもなく怠惰なように感じられますが――
実際には、そうではなくて――
作られたものを壊すのにも――
それなりの手間や時間がかかるのです。
真に怠惰な人というのは、作りもしなければ、壊しもしない人です。